【科学】未来のエネルギー?

昨日のうちから、画期的な新エネルギー(候補)が、ふたつほどネットを賑わせているようで。
その一方、あからさまに怪しげなほうが大々的に報じられ(信じ難いという意見も含めて)かなり盛り上がってきていて。
もう一方の、もしかしたら期待できるのかもねって程度には怪しくないほうが、その騒ぎに隠れてあまり目立っていないように見える、という現象は、ちょっと興味深い。

どっちがどっちとは言わないけれど、両方とも書いてみよう。

水と空気だけから電気エネルギー?

水から電流を取り出すことを可能にした新しい発電システム「ウォーターエネルギーシステム」を見に行ってきました - GIGAZINE
続報1続報2もチェックのこと。
こちらは、普通の水を、開発した装置に通すだけで電気が取り出せるってシロモノ。
図解を見てみると、実際にエネルギーを取り出す部分は、水素と酸素を反応させてエネルギーと水が得られるっていう、「普通の」燃料電池
で、その燃料となる水素を、水からどうやって生成するのかといえば、「企業秘密」な触媒による化学反応としか言っていないもよう。
この部分が不透明すぎるから、真面目に扱うような話ではないと思われているのが現状っぽい。
/.Jの流れを見ておくと、どこにどういう問題があるのか、理解の一助になるかも。

6/14追記

なんか、どうも、水から水素への変化は、ナトリウムだかカリウムだかの、金属との酸化反応で確定って話もちらほら。 いやまぁたしかに、それがいちばん現実的な種明かしだけれども。
そしたら、その金属は触媒なんかじゃなくて化学反応の当事者なんだけど、つまり消耗してしまうから、補充しなきゃいけないわけで、それを製造するのと、単に水素を製造するのと、エネルギー効率としてはどうなの?とか。
この方法だと、綺麗な水を入れたら、電気のほかに、なにかしらの金属が溶けた水溶液が残るけど、それはどこにどうやって排出するの?とか。
クリアしなきゃいけない問題が、いっぱい出てきてしまいそう。
‥‥もともと隠していた問題が、見えるようになったって単純な話ではあるけど。

常温核融合

もう一方は、こちら。
簡易炉で「常温核融合」か 北大院・水野氏が確認 国際学会で発表へ - 北海道新聞
ほかのソースはないかと思って探してみると、ほんの数週間前にもどこかの名誉教授が「成功した」と発表しては即座にトンデモ扱いされていることばかりが引っかかり、やっぱりそういうものだよな、と思ったり。
こちらのほうは、記事から引用してみて、と。

実験はステンレス合金製の炉(内容積八十八cc)の内部に、炭素を含む多環芳香族炭化水素の一種フェナントレンを〇・一グラム投入した上で、高圧水素ガスで満たし密閉して(略)白金とイオウを触媒に用い(略)加熱器の設定温度を六六○度とした場合、設定温度に達して加熱を止めた後も炉内の温度は約一時間上昇を続け、最大で六九○度に達した。

こっちは実験のレシピも明らかにしているので、誰かが追試に成功することも、あるかもしれない。
とはいえ個人的には、ネット上で見えるソースが、北海道新聞のものしかないのが、気にかかるところ。
ただ、日経新聞系が報じていないから、逆に信憑性があるかも、とか言っちゃってみる。
この発表を行った水野忠彦という方は、ざっとぐぐってみたところでは、以前から常温核融合を研究していたようで、(おそらくそれに関連する研究で)2004年に「Guiliano Preparata賞」を受賞しているみたいで。
これは「国際的な賞」らしいんだけど、Wikipedia(EN)でGuiliano Preparataを引いてみても、その賞についての記述がどこにもなかったりして、なんか嫌な感じ。
そもそも「参照」としてすぐに「常温核融合」に繋がってるあたり、鵜呑みにはできない予感もちらほら。
(ちなみに、イタリア語版でも、やっぱり賞については書かれていない)


えぇ、自分は文系だとかゆって、こういう話題に免疫のないひとに(そんなひとがここを見ているかはおいといて)、ひとつアドバイス
「すごい発見をした」ってニュースがあったとしても、その発見者の肩書きがどんなに立派でも、研究を行った大学や企業がどんなに有名でも、どんなに大仰な名前の学会で発表してても、すぐに信じないほうがいい。
それが事実なら、じきに普通の新聞の一面にでも載るだろうから。


「なぁ姉貴。これも、やっぱり、怪しいモノ?」

 ニュースを見ながら、そんなことを聞いてくる、愚弟。愚かとはいえ、教育のかいがあったようで、お姉ちゃん少し感動。

「お、少しはわかってきたんじゃない? うまくごまかしてあるけど、これは『原料』を作るのに、別のエネルギーが必要なわけ」

「でも、入れた以上のエネルギーが出てくればいいんじゃないの? 焚き火とかだって、最初はライターの小さい火だしさ」

 そういうところに気がつくとは、ますますよろしい。でも、まだ甘い。

「それは結局、燃やす木の枝なんかのエネルギーを使ってるだけ。燃やしたら炭になって、もう元にもどらないでしょ? これは、再利用可能なんて言ってるんだから、そこがまず怪しいと」

 なんか納得のいかないような顔で、わたしを見る。んー、わかりやすく説明するなら‥‥

「アンタの好きな言葉でいえば、最高のレートでも『等価交換』ってこと。あるモノの状態をAからBにすると『最高で』100のエネルギーを取り出せるなら、BからAに戻すには『最低』でも100のエネルギーが必要になるわけ。この原則を覚えておいて、あとはどこで状態変化が起こるのかを考えるようにすれば、だいたい大丈夫」

 「だいたいってなんだよ、知ったかかよ」と言おうとしたはずのその口を、わたしは許さなかった。