【ネット】下着と携帯小説のコラボレーション

いや、自分でも、なにを言っているのか、きちんと理解できている自信がないような。
日本経済新聞


「コラボ」な部分は、以下のとおり。

小説のなかに下着を着たり選んだりするシーンを登場させ、それに合ったデザイン・機能の下着を開発する。

えーと。
自分のことを読書家だとは決して思っていないけど、そういうイメージを形づくれるくらいに下着を描写している小説って、あんまり見たことない。
見たことはないけど、ちょっと考えてみて、恋愛小説なら、下着を着るとき選ぶときの心理描写の材料としては、じゅうぶんにアリだと思い直した。

大事にしまっていたそれは、わたし自身。

雨が似合う陰気な花だと信じ、自分と重ね合わせていた紫陽花を、彼は好きだといった。

淡く青いモザイク模様のそれは、人目でそのときの紫陽花を連想させて。わたしは初めて、ひとに見せるために、下着を買い求めた。

こんなん?


こういうジメジメした描写でなくても、もっとカラっと、普通に服を選ぶのと同じような描写も、アリかもしれない。
うん。表現が可能なことは、理解できた。
ただこのニュース、最大の問題は、「携帯小説」って部分じゃないか、もしかして。
回りくどい描写より、シンプル&ストレートに一発勝負、的な携帯小説の空気を壊さずに、デザインや機能を説明できるのか、気になるところではある。

 入ってきたら怒るからね、と言って、彼女は試着室のカーテンの中に消えた。

 その選択肢が存在しうることに、そこでようやく気付く。彼女には悪いけど、そういう方向には頭が回っていない。

 むしろ、いま、この状況そのものを楽しんでいる自分がいた。

 ランジェリーショップに入るのは当然はじめてで、扉を潜るまでは抵抗もしていたけれど。足を踏み入れてみると、この異空間は、これはこれで心地よい。

 カップルで来店するのは普通のことだ、と彼女が言ったのは真実のようで、店員さんも、高校生くらいの女の子グループも、ぼくのことを異分子のように見ることはなかった。

 排除されないのなら、ちょっと観察してみようと想い、そのあたりの商品を見て回ってみる。正直なところ、この空気、悪くはない。

「こういったお店は、はじめてですか?」

 そう、店員さんに話しかけられたときも、不思議と、自然に答えられた。

「そうなんですよ。やっぱりなんかちょっと、雰囲気が独特ですね」

「そのわりには、堂々としていらっしゃいますよね」

 お互いに、ちょっと笑う。他の店でこんなふうに話しかけられていたら、すぐに「結構です」とごまかしてしまうのに、やっぱりこの空気は、なにか違う。

「活発な彼女さんみたいですね。プレゼントするなら、こっそり、お手伝いしますよ?」

 まだ、そんなんじゃないんですよ、と答えかけたところで、彼女がぼくを呼ぶ。すみません、と一声かけて、まだ、その資格はないから、という言葉を飲み込んで、試着室に向かった。

 彼女はカーテンの隙間から顔だけを覗かせ、小さな声で、ぼくに尋ねる。だから、ぼくは、こう答えてやった。

「いつかぼくがプレゼントをするから、そのときに、お願いするよ」