【ソフトウェア】4次元デジタル宇宙ビューワー"Mitaka"(ミタカ)

国立天文台4次元デジタル宇宙プロジェクト:Mitaka

国立天文台作製のソフトウェア。
基本的な遊び方はふたつあって、ひとつは、地球上の任意の地点、任意の時間での、夜空を見る機能。
もうひとつ、こっちがおもしろくて、地球上から『離陸』し、宇宙へと飛んでいく機能。
地球が小さくなったころに月が見えはじめ、そのどちらも見えないくらいに遠ざかってはじめて、他の惑星の公転軌道の世界に入る。
さらに遠ざかり、外惑星も小さくなったころには辺りをオールトの雲が覆い、そこから抜け出して、はじめて外の恒星、『アルファ・ケンタウリ』を見たときの孤独感。
人間は孤独な存在だ、と言われても納得できるくらいの、この距離感は、一度体験してみるとよくわかる。
さらにそこから遠ざかって、銀河の世界まで行くこともできるけど、そのあたりは実際に試してみての、お楽しみってことで。
いやしかし、これを見てみると、スペースオペラってのがどれだけムチャやってるかってのが、よくわかる。あ、この『ムチャ』はもちろん誉め言葉ね。


「こうやって、さぁ」

 遠くにある街燈が、彼女の姿を影絵のように浮かび上がらせていた。

「電信柱に体を預けて、先端が視界の中心に来るみたいに、夜空を見るとね」

 その言葉のとおりに、すぐ横の電柱に背中をつけて、視線を空に向けた。影絵は、より濃い闇に染まり、細い体のラインをくっきりと形づくる。

「空に落ちていく感じがして、ここが不安定な世界だってことに気付くんだよ。知ってた?」

 影が崩れる。慌てて近寄ると、彼女は電柱を背にしたまま、ぺたりと座り込んでいた。

 手を伸ばせば届くのに、ようやくその肌に触れられるのに、俺はそれができずにいた。

「だからね。気付いちゃったからね。この不安定な関係は、これで、おしまい」