【モノ】「越えられない壁」の信号機

ひろぶろさん経由で、この話題。
http://ascii.jp/elem/000/000/128/128464/

自動車が交差点に進入するその地点に、視界を塞ぐ形でレーザー光による仮想的なスクリーンを作り、「赤信号」の表示をしようというコンセプト。
そのインパクトは、実際に写真で見たほうがわかりやすいので、リンク先を見ていないひとはお早めに。

これも一種の拡張現実と言っていいのかはわからないけど。進入禁止の「意味」にビジュアルを付与した結果、シンプルで効果が高いものになったことは疑いようがない。
「交差点」という概念を強化する。デザインってのは、こうあるべき、かもね。


まぁ、交差点の向こう側が見えないとか、見えるにしても注意力が分散されてしまうとかいう欠点もありそうだけど。
それをカバーするには、この信号によって見えなくなった情報を、別の形で強いフィードバックを与えることにより補うことを繰り返して、『運転者がなにも考えなくても(指示に従うだけで)確実な安全を担保できる』システムにするアプローチが存在する。
それが良いのか悪いのか、いまの現実のように『運転者が能動的に状況を把握し、的確な行動を選択することが求められる』システムと比べるとどちらが良い世界なのか、想像してみると、楽しいかも。


「さあさあ、これが、拡張現実で可能になる世界です!」

 そんな口上で、ショウは始まる。

 机と椅子と棚で、女の子の部屋の一角を再現したようなセット。机の上にはシルバーの大きなサングラスが置かれ、棚には大小あわせて十数個のぬいぐるみが並んでいる。

 主演の少女が登場。机に向かい、サングラスをかける。

 そして、棚から30センチほどのワニのぬいぐるみと、拳ほどの大きさのウサギのぬいぐるみを取り出す。

「どうやら、ワニをキーボード、ウサギをマウスに設定したようです。彼女のグラス越しには、その情報が付加された世界が見えています」

 少女はワニを机上に横向きに置き、その傍らでウサギを軽く握った。

「彼女は、なにを描こうか考えているようです。それでは、そこの緑のチュニックの女性、なにを描いてもらいたいですか? 簡単なものが嬉しいですねー」

 りんご。という控えめな声が聴こえたと同時に、少女は『マウス』を動かしはじめる。

 右に。上に。ダブルクリック。円を描いて、またクリック。

 『クリック』のたびに、ウサギの耳がぴくぴく動いて観客を和ませながらも、少女は『マウス』の操作を続ける。

 その手が止まり、次に『キーボード』に向かう。少女の指は『キー』の上を滑らかに滑り、短い言葉を入力する。少しだけ沈黙があって、最後に右人差し指が力強く振り下ろされた。

 プリンタが動作する騒がしい音が、ややオーバーなくらいに舞台に響く。まもなく、棚の中で存在感を放っていた大きなクマのぬいぐるみが抱えていた箱から、甲高い電子音とともに紙が吐き出され、観客の笑いを誘う。

 少女は立ち上がり、その紙を取り上げ、客席へ向かって広げる。

 「青森産 りんご」の文字とりんごのイラスト。

 歓声と拍手の中、彼女はサングラスをとって、深々と一礼をした。